モーターの話

この記事は完全ではない気がする。

あと特定の点について深く掘り下げる内容ではない。

 

 

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これはMAXON RE40のデータシート[1]の表です。

 

巻き数・トルク・回転数・出力の関係

考えはじめる

まずは単純化するために銅損だけを考慮した理想的なモーターで考える。

モーターのコイルは電磁石。巻き数が増える/電流が増えると磁力が強くなる。磁力が強くなるとモーターのトルクが上がる。

コイルは誘導起電力を持つ。ざっくり巻き数に比例する。誘導起電力が大きいとモーターが回転した時の起電力が大きくなり、回転数係数が小さくなる。(ここの用語は誤用かもしれない。注意。)

コイルの大きさは有限なので、巻き数を増やすと巻線が細くなる。逆も然り。巻線が細くなると巻線の抵抗率(定義とは異なる。注意。)が増える。巻き数が増えているので巻線の長さも増えるのでこれは比例ではなく二乗で効いてくる。

コイルに流せる電流は熱的な限界によって決まる。

 

モーターのコイル体積が一定の場合、巻き数が増えると・・・、トルク定数上昇、巻線抵抗増加、回転数係数(Kv値)低下。

また、巻線抵抗の増加に伴って、銅損の増加、連続定格電流の低下が起きる。

 

具体的には巻き数をn倍にすると、トルク定数はn倍、巻線抵抗はn^2倍、回転数係数は1/n倍になる。

連続定格電流は巻き数1倍の時の1/nになり、連続トルクは変化なし、したがって電源電圧一定であれば出力は1/nになる。

表の48V仕様(148877~218014)を比較すればよくわかる。

 

現実に立ち返る

出力を上げたければ巻き数を減らせば良いように思えるが、巻き数を減らせば減らすほど高回転型になり、鉄損やブラシの損失や耐電流、あるものによっては空冷ファンの損失が増加していくので無限に高出力化できるわけではなく、ラジコン用の高出力モーターはだいたいこの低巻き数化による高出力化の限界に近い領域にある。

 

これは若干特殊な例ではあるが、表の一番左、12V仕様(148866)の最大連続電流は24V仕様と同じ6Aになっているが、これはモーターのブラシの耐電流値に依存しているためと思われる。48V仕様からの銅損を基準にした推定では、最大連続電流は24V仕様でも6Aをやや超えるはずだが、同様の理由でそうはなっていないと思われる。

 

効率の項を見ればわかるように、48V仕様の中で最も回転数が高い148877を中心に、高トルク←→高回転の両方向で効率が低下している。低回転高トルク側に寄ると、損失は大きく変化しないものの、出力が低下するので結果的に効率が悪化する。

 

巻き数を減らさなくとも、電圧を上げればモーターの出力を上げられる。ただし最大回転数を稼ぐことによって高出力化をしているため、戦術の理由や、ベアリングの回転数・許容トルクやブラシの性能によって(実用的な)最大回転数が制限される。極端な電圧をモーターにかけるとベアリングの寿命がゴリゴリ減ったりブラシが光り輝いたりする。(大きめのマブチモーターだと定格でも光るけど・・・。)

 

モーターのインダクタンスは巻き数にも強く依存する。極端に大きな巻き数のモーターは電気的時定数が大きくなってしまうが、ロボットに使われるような出力重量比が高いモーターであれば機械的時定数に比べて十分小さいので、LAP PWM使う時や電流制御したい時以外はあまり気にしなくていいと思う(しらんけど)。

 

他の要素 

ブラシレス、減速機

ブラシレスモーターにも同様の理論が適用できる。ただし、ブラシに起因する電流・回転数的成約は発生しない。

インナーローター型のブラシレスモーターはだいたい4極。アウターローター型は空用、陸用、ドローン用、ヘリ用、スケボー用など多種多様だが極数が多いほど低回転高トルク傾向になる。多極・大口径化による低回転化は、巻き数の変更によるものとことなり、出力とのトレードオフ関係は発生しない(しにくい?)。

 

用途によるが、低回転・高トルクだと減速比を減らせるので減速機を小型化できたり、省略できたりする。減速機の効率は遊星で1段あたり80~90%程度、スパーだともう少し良い程度なので減速機の段数が2以上ぐらいになってくると無視できない。あと重いし嵩張るから無くせるなら無くしたほうが良い。

つまり低回転高トルクのモーターは有利。

 

モータードライバ

巻き数に関わらず、連続トルクは(ほぼ)一定ではあるが、高出力な巻き数の小さいモーターではトルク定数が小さく、連続トルク電流が増加する。モーター側からすると、巻線抵抗にしか依存しないので電流が増加してもブラシの耐電流以外はあまり影響しない。

一方、モータードライバからすると出力電流が増加するし、配線やコネクタでの損失が出るし、電源のリプル電流は増えるし、何も良いことがない。巻数が少ないとインダクタンスが小さくなりがちなので、場合によってはPWM周波数を上げなければならなくなったりする。特にLAP PWMだと追加インダクタが必要になったりして面倒。

 

まとめ

減速機的な理由も含めて、出力に余裕があるからと言って、巻き数の少ない過剰に高回転なモーターを使うのはあまり褒められたものではない。しかし、モーターを小さくしようとすると、出せるトルクには限度があるので回転数で出力を稼がなければならず、高回転なモーターを使わなければならない時もある。

 

出力や効率など様々な要件をバランスよくクリアするためには、大きなコイルを持つモーター、つまり十分大きなモーターを使うことが最良である。

もちろんでかけりゃいいってもんじゃないが。

 

おわり。

 

参考資料・引用元

[1]MAXON RE40グラファイトブラシ150Wデータシート