中華CNCフライス導入記

母なる地球と中華CNCに人柱してくれた偉大なる先人たちに感謝。

 

 購入機種

購入したCNCはこれです。

3020クラス、200V、800W水冷スピンドル仕様です。

ja.aliexpress.com


(2024/02追記)
AliExpressの商品ページが消えたとき用のスクショ

仕様(商品ページからコピペ)

パワー: 1.5kw

電圧: 220v/110v/380v

水冷スピンドル

水冷サイクルスタイル: 機械付属

チャックモデル: ER11-maximum 7mm

処理範囲mm: x200 * y300 * z90

テーブルサイズmm: x240 * y470

送り高さ: 110mm

寸法: 470*580*620mm

閉ループステッピングモーターモデル: x軸57 (長さ100 3a) * y軸57 (長さ100 3a) * z軸57 (長さ100 3a)

アクティブユニット: x軸クロムメッキおよび焼き入れベアリング鋼25mm

Y軸クロムメッキおよび焼き入れ軸受鋼25mm

Z軸クロムメッキおよび焼き入れ軸受鋼25mm

トランスミッションユニット: 1605ボールねじtbi

処理移動速度: 3800/min

位置決め精度: 0.01-0.05mm

コントローラーサイズ: 440*240*210mm

機械重量: 40kg

 

AliExpressで購入しましたが、どう考えてもライセンス通ってないMach3とか送ってこないomio cncのほうが安心できると思います。

ちなみにどっちもサポートはちゃんとしてくれました(ちゃんと・・・・?)

OmioCNCは中華ホビーCNCメーカーとしては一番有名な気がします

www.omiocnc.com


アパートで運用する場合は3020か3040クラスが良いですね。持ち家があれば6040クラスでも置けそうですが、3040クラスでワークサイズが不足することはそうそう無いと思います。2面に分けて加工中に次の加工の段取りする、とかはできそうですが。

 

選定基準

*必須*

・USBコントローラー

パラレルポートだとコントロールPCの準備が面倒になる上に制御周期の乱れに対してとても弱くなるため

理想としてはイーサネットコントローラーですが、コントローラーは基本的に交換可能なので必要そうなら交換しましょう。

(2024/02追記)→続編に記載がありますが、これのせいで座標ズレがランダムに発生していたのでEthernetコントローラーに換装する羽目になりました。参考にしてくれよな。

 

スピンドルがまとも

安価な中華CNCにありがちなこういうスピンドルモーターで金属を切削することはできません。

ja.aliexpress.com

ベアリングがゴムブッシュで圧入になっていて、剛性どころの話ではないですね↓

plaza.rakuten.co.jp

 

・ボールねじ

バックラッシュと戦いたくなければ素直にボールねじ仕様にしておくべきだと思います。中華CNCなら、10万以上の機種だとだいたいボールねじ仕様になっていますね。

 

*あったほうがいい*

・水冷スピンドル

空冷スピンドルだと冷却ファンの風で切粉が舞うのであまりおすすめできないです。

 

購入した機種だとX軸背面にスピンドルラジエーターがあります。

防音箱に入れると、スピンドルの熱が防音箱内に放熱されてしまうので良し悪しはありますが、ポンプは騒音源になるのと、配管の取り回し的にはこのほうが良いです。

 

クーラント用配管

切粉除去は、掃除機で吸うかクーラントかけ流しで循環させるかは難しいところですね。

クーラントかけ流しだと被削材の冷却ができるので、樹脂切削で溶けて失敗することもなくなりますし、金属切削だと切削速度を上げやすいというメリットはありますが、被削材の固定に両面テープが使えないのはちょっと不便ですね。あと切粉の処理が面倒になるとか。

コンプレッサー+掃除機の組み合わせのほうが冷却と切粉処理を両立できて強いかもしれません。コストとか静音性は犠牲になりそうですが誰かやってないんだろうか。

追記→加工のセットアップが面倒すぎたのと、たまった切子にカビが生えてしまう問題があり、切削液は使わなくなりました。

 

・リニアガイド

購入した機種だとリニアシャフトですが、小さい3020クラスなので良いかなと。そもそも中華CNCは精度だしに難があるのでここは妥協するべき点と思います。6040クラスとかになるとリニアシャフトが長くなりすぎるのでフレームに固定できるリニアガイドを選んでおいたほうが無難かも。

 

ステッピングモーターが強い

トルク負けしにくくなるので、基本的にステッピングモーターはデカくて強いほど良いです。ステッピングモーターは回転数を上げるとトルクがぐんぐん下がっていくので、小さいステッピングモーターで高速切削するのは難しいです。

 

・200V仕様

100V仕様だと、スピンドルインバーターが110V仕様になるんですが、隣で業務用掃除機とか使うと電圧低下で止まることがあります。200V引ける場合は200V仕様を選んでおいたほうが安心かなと思います。

エアコンは100Vだったので、IHの200V系から分岐させて引き回しています。電気工事士の資格持っている人は配電盤から持ってきたほうが無駄がなさそうです。

(2024/02追記)→引越し後は200Vコンセントが出ておらず、改造を余儀なくされました。インバーターは内部で平滑しているので、外部に巨大な倍圧整流回路をつけて半分の電圧でも駆動できるようにしました。ステッピングモーター用の48Vスイッチング電源や内部12V電源は100Vでも動いたのでそのまま使っています。

 

輸送・搬入

商品ページに送料$315.79って書いてありますが、実際には追加で500$ぐらい取られました。クソがよ!!!

配送はDHLだったんですが、組み立てられた状態で木箱に入っていて重量が70kg以上あり、一人で運べる重さではなかったので、DHLのおばちゃんと一緒にトラックから降ろしてアパートの共有玄関に仮置しました。

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迷惑すぎる・・・

流石に放置するわけにも行かないので、当日の夜にバールで箱を破壊して部屋に搬入しました。組み立て済みだと本体重量50~60kgぐらい(推定)あり、人間一人で運べる重さではないのでできるだけ分解して軽量化してから運びました。

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ここまでしても階段を登るには気合が必要でした。必要なのは筋力。腰はぶっ壊れました。

あと部屋に置いておくと機械油の臭いがすごくて工場研修の記憶が蘇ってきたので即座にパーツクリーナーでキレイキレイしました。健康にも悪そうだし。

 

セットアップ

CNCの改造

基本的に中華CNCはそのまま使えるものではないので、早速改造していきます。

まずはX軸のケーブルキャリアが長すぎて幅を取るので、切り詰めて防音箱に収まるようにします。ケーブルキャリアを短くすると、スピンドルクーラントのタンクやポンプと干渉するので、これらも配管やらアダプタやらを改造して背面に納めます。
※ケーブルキャリアが防音箱に収まらないのは検討ミス

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ステッピングモーターやリミットスイッチやライトやファンやらの配線が端子台での分岐になっていて、整備性が悪いのですべてにコネクタをつけて分電盤を配置します。分電盤の裏面は金属の切粉で切粉ショートしないようにグルーガンで絶縁しておきます。

ステッピングモーターとボールねじの締結部分は、負荷で滑って軸ズレの原因になるので、入念に脱脂してネジが破断しない程度に強く強く締めましょう。

 

コントロールボックスの改造

早速箱を開けてコントロールボックスの構成を確認します。中華CNCのコントロールボックスは、だいたい既製品を組み合わせているだけなので、個々の型番でググると説明書が出てきます。設定やらがおかしかったり壊れかけであることがあるので、一つ一つチェックしていきます。主要な部品は以下の通りでした。

スピンドルインバータ:ADLEEPOWER AS2 2.2kWインバーター

USBコントローラ:Mach3 USB Motion (?) ここ参照→BuildYourCNC - Mach3 USB Interface Board

ステッピングモータードライバ:DM556

まあ普通ですね。もう少し上位の機種になると、ステッピングモーターとモータードライバがエンコーダつきの閉ループ制御になるので、お金をかけるならここかなと思います。

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購入時点だとファンの音がめちゃくちゃうるさいので、ファンを交換したりDCDCコンバーターを挟んで駆動電圧を下げて静音化します。インバーターに小径の冷却ファンがあって、これが一番うるさかったです。

次は怪しい部分がないかチェックします。この個体は400Wスイッチング電源の出力平滑フィルタの二重巻きインダクタの配線が片方断線していました。コンデンサも謎メーカー品な上にあからさまに新品でなかったので、修理ついでに手持ちの日本製コンデンサに交換します。あとインバーターの設定が間違っていて、回転方向が逆になっていたり回転数が半分しか出なかったりもしたのでこれも修正しました。あとはコントロールボックスのアースがちゃんとされているか確認しておきましょう。PC側と共通アースにしておいたほうが良いと思います。

 

コントロールPCセットアップ

コントロールソフトウェアはMach3です。説明書に従ってセットアップするのですが、一緒に送られてくる説明書は間違っているので、コントロールボードの説明書をインターネットから探してきて、一つ一つ突き合わせながら設定していきます。

Mach3の動作周期が遅いと脱調の原因になるため、タスクマネージャから優先度を"リアルタイム"にしておきます。これ重要。

 

面出し板

Z軸高さを稼ぐためと、安定した加工面を用意するために面出し板を取り付けます。

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CNCのフレームに雌ねじとピン穴開けてネジ止め+位置決めしています。t15で雌ねじの下穴を開けるのがしんどかったのと、切粉が詰まらない形状にするため、両面加工です。

※ピンで位置決めしているのは、この面出し板じたいを両面加工するためで、面出し板として使っている時に使うものではないです

 

防音箱

CNCフライスは人間の生活空間に設置して良いものではないので、せめて箱の中に閉じ込めて騒音からは逃れられるようにしましょう。ちなみに今のアパートは鉄筋コンクリート造で、多少の騒音はドア1枚挟めば聞こえなくなるので今の所問題にはならなさそうです。ていうか洗濯乾燥機のほうがうるさい。

 

とりあえずFusion360でぱぱっと設計します。

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この時CNC本体のモデルも作っておくと干渉チェックに便利です。

木材はウッドモールで購入しました。ホムセンカット+軽トラという手もありましたが、精度とか部屋までの持ち込みとかペーパードライバーであることを考慮して通販にしておきました。

woodmall.jp

注文後画面バグったりしましたが、注文はできていました。

吸音スポンジは中華で買っておきます。圧縮された状態で届くので、お風呂場で水につけて復活させ、部屋で乾かします。恐ろしくかさばるので一週間ぐらい吸音スポンジと同棲するはめになりました。

組み立ては適当にやって、はい完成。

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設計や組み立てで木材の反りを深く考えていなかったのは失敗でした・・・。が、防音性能は問題なさそうです。

あとは庫内カメラとか照明とか取り付ければOKです。

クーラントは水道水を使用しています。水溶性切削液の準備もあるのですが、処理の面倒臭さを考えると水でどうにかごまかしたい・・・。循環システムは防音箱の下に設置してあります。CNCからの排水をコンテナボックスに落とし、フィルタを介してからポンプで送り出しています。シンプルですがとりあえず使えそうです。

(2024/02追記)→今思うとちょっと板厚は1cmちょっとぐらいあれば十分だったかなと思う(底面除く)。板材を各辺の板材にネジ止めする構造は組みバラししやすいものの、もう少しメンテナンス性を考慮したほうが良かったと思う。

 

CNC監視システム

防音箱に入れてしまうと動作状況がわからないので、庫内カメラをつけて外部から監視できるようにします。できればインターネット経由でコマンド送って緊急停止もできるようにしたいので、今回はDiscordのライブ配信python botを使用します。レイテンシとかセキュリティとかアクセスできるデバイスを考えると、webrtcとか使って自分でサービス構築するより、既存のシステムに乗っかったほうが楽ですね。

最初はRasPi4Bで構築しようとしたんですが、Ubuntuを入れると動作が遅すぎたのでアキバでジャンクデスクトップを購入してセットアップしました。トータル1万円ぐらいかかったのにもったいない。

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i5 3470搭載で2500円は破格。余っていたメモリを増設、古いSSDを譲っていただいてSSD化などを行い、現在のミドルスペックノートPC並になりました。

でDiscord入れてカメラ繋いで動作確認しました。

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Discordは2カメラ動作はできないので、Discordで1カメ、ビューワで2カメ開いてGoライブでビューワーウィンドウを選択することで擬似的に2カメラとしています。ビューワ経由だとレイテンシが+0.5sぐらいになるのと、画質が悪くなるので別の方法も検討したい・・・・。

ちなみに複数カメラに対応しているビューワ探すのに苦労したんですが、とりあえずkamerkaは複数カメラ使えました。

(2024/02追記)→加工ミスやもしものことなどを考えると、家にいない時にCNCを稼働させるのはリスクが高すぎ、結局使うことはなかった。

 

精度計測

スピンドルの軸ブレとスピンドル軸-Z軸の傾きを計測。

スピンドルは、ダイヤルゲージ読みでエンドミルのシャンク部分の振れが5um以内に収まっているぐらいなので十分良さそうでした。中華コレットですが意外と使えそうですね。

スピンドル軸-Z軸の傾きはスピンドル外径にダイヤルゲージをあててZ軸を動かして計測し、X軸まわり・Y軸まわりともに1um/1mm以下に収まっていました。良いとは言えませんが、薄板しか削らないのでこの程度で十分でしょう。

スピンドル軸の傾きは別途確認する必要があるのですが、手持ちの標準ダイヤルゲージだとちょっと難しいので、テコ式ダイヤルゲージを用意して計測する必要があります。

面出し板の切削面を指でなぞると、ノコギリ刃状になっていることがわかるので、傾きがあるかないかで言えば、あるようです。

 

今後

・XY軸の直行性や繰り返し精度確認

スピンドル軸の傾きを計測

・切削条件だし

・Discord botを利用して、外部からメッセージ打つとCNCを停止できるようにする

 

続編

manjuu.hateblo.jp